既存建物の改修や設備更新では、現場で以下のようなお悩みに直面することが多くあります。
「古い建物で、図面が残っていない」
「過去の改修で、図面と現場の現況が合っているか分からない」
「天井裏や入り組んだ配管の位置関係を正確に把握したい」
こうした場合に役立つのが、建物や設備を立体的に記録する「点群データ」です。
点群データを基にBIMモデルを作成すれば、複雑な設備空間も3Dで正確に確認でき、改修計画の策定や施工時の干渉チェック、将来の維持管理まで幅広く活用できます。
今回は、実際にビルの機械室をレーザースキャナーで計測し、点群データからBIMモデル化した実例をもとに、作業の流れ・費用目安・点群活用のメリットを分かりやすく解説します。
点群データとは?現況を3Dで再現する技術
点群データとは、空間や建物を無数の点の集まりとして記録した3Dデータです。
各点にはX・Y・Zの位置情報があり、その集合によって壁・床・天井、配管、ダクト、機器などの形状や位置関係を立体的に再現できます。
弊社(Joh Abroad)では、主に3Dレーザースキャナーを用いて点群データを取得しています。写真だけでは伝わりにくい距離感や設備同士の奥行き・位置関係も、ミリ単位の現況に沿って確認できる点が大きな特長です。
図面が残っていない既存建物はもちろん、何度も改修を重ねて図面と現況にズレが生じている建物であっても、正確な「現在の状態」をデジタル空間上に再現することが可能です。
点群取得からBIMモデル化までの流れ~機械室の実例~
今回ご紹介するのは、あるビルの機械室(約200㎡)を対象とした実例です。
現地で約30か所からスキャン撮影を行い、点群データを作成したのち、躯体・鋼材・配管・ダクトなどの3Dモデリングまでを実施しました。
1. レーザースキャナーで現況を計測する
機械室内にレーザースキャナーを設置し、複数の位置から現況を計測します。
レーザースキャナーは、設置した地点から見える範囲を計測します。そのため、配管や機器が多い機械室では、一方向からの計測だけでは死角が残ります。必要な位置にスキャナーを移動させ、複数の地点からデータを取得することが重要です。
【本実例のスキャン実績】
・スキャン数: 約30スキャン
・計測時間: 1スキャンあたり約5分
・現地撮影: 作業員1名で約3時間
【ポイント】
ご依頼時に平面図・手書きの見取り図・現場写真などをご共有いただけると、事前に必要なスキャン数を正確に試算しやすくなります。設備が非常に複雑な場合などは、お見積もり前に現地調査を行うことも可能です。
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2. 点群データを処理し、現場全体をつなぎ合わせる
次に、複数地点で取得した点群データを専用ソフトウェアで処理し、1つの大きな3D空間データとして結合(合成)していきます。これにより、機械室全体の配管・機器・空間の位置関係が立体的に立ち上がります。
データ処理の過程では、撮影時に入り込んだ不要なノイズ(作業員や浮遊物など)を除去し、モデリングしやすいクリーンなデータに整えます。
点群データは非常に容量が大きいため、このデータ処理や保管・管理も重要な専門工程となります。「撮影が終わればすぐにモデルができる」わけではなく、データ処理を経て、初めてモデリングに活用できる状態になります。
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3. 点群を基に、躯体・設備を3Dモデリングする
最後に、処理済みの点群データをBIMソフトに読み込み、躯体・鋼材・配管・ダクトなどを3Dモデル化します。
点群はあくまで「位置を持った点の集まり」に過ぎません。BIMとして活用するためには、点群に沿って「これは配管」「これはダクト」「これは空調機器」といった属性を持つ3Dパーツを立ち上げていく必要があります。
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BIMモデル化のメリット
属性情報の登録: 機器の型番・設置年月・点検履歴などをモデル内に登録可能。設備情報を一元管理でき、将来の更新計画や予防保全に役立ちます。
設備CADとの連携: 作成したモデルを「Rebro(レブロ)」などの設備CADで利用できるフォーマットに整えることで、改修工事の納まり検討や干渉チェック、施工図作成へスムーズに展開できます。
点群取得・BIMモデリングの費用目安
「点群データからBIM化する場合、費用はどのくらいかかるの?」というご質問をよくいただきます。
今回の機械室実例では、こちらが費用の目安です。
| 作業内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 点群取得(現地撮影)・点群データ処理 | 約40万円~ |
| 点群取得・処理+モデリング作業 | 約65万円~ |
| Rebro作業(属性入力など) | 3,500円/時間~ |
対象条件: ビル約200㎡の機械室
スキャン数: 約30スキャン(撮影:1名/約3時間)
モデリング範囲: 躯体・鋼材・配管・ダクト(機器属性入力なし)
制作期間: 点群データ処理~モデリング完了までおよそ2週間
※金額は本実例の目安です。現場条件や作業内容により変動します。
費用は「スキャン数」と「BIM化の範囲」で考える
点群取得やBIMモデリングの費用は、単に「床面積(㎡)」だけで決まるものではありません。障害物が少ない広いホールと、配管や機器が密に交差する機械室では、必要な手間と作業時間が全く異なるためです。
主な変動要因は、以下のとおりです
- 必要なスキャン数
- 配管・ダクト・機器など設備の複雑さ
- 対象範囲(室内の一部・建物全体・屋外設備など)
- 求める精度
- モデリング範囲と属性入力の有無
- 現地調査や遠方対応の有無
「現況を3Dで記録しておきたい」「改修時の干渉チェックができれば十分」「設備情報を全て入れてLCC(ライフサイクルコスト)管理に使いたい」など、目的によって最適なモデリング範囲や精度は大きく変わります。
不必要な範囲まで過剰に細かくモデリングするとコストが膨らんでしまうため、まずは「何のために点群・BIMを使いたいのか」を整理した上でご相談いただくのがベストです。
点群データとBIM化で既存建物の改修・維持管理を効率化
点群データは、図面がない建物や図面と現況に差がある建物でも、現況を3Dで把握できる技術です。複雑な配管・設備の位置関係を確認しやすくなり、改修前の測り直しや手戻りの削減につながります。
また、BIMモデルに機器の型番・設置年・点検履歴などの情報を登録すれば、設備更新や点検計画、将来の維持管理にも活用できます。
費用は、設備の複雑さやBIM化の範囲などを確認したうえでお見積もりいたします。点群データの取得やBIMモデリングにご興味がある方、ご不明な点がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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BIMについて詳しくは、Autodesk公式のBIM解説もご参照ください。
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