海外の人材雇用が促進している近年、採用時に取り入れたいのがバックグラウンドチェックです。バックグラウンドチェックとは、候補者の職歴や学歴、犯罪歴、破産歴、信用情報などを調査するプロセスのことです。
日本ではまだバックグラウンドチェックの実施が進んでいませんが、海外諸国では子供やシルバー市民と接する職業などにおいて、採用時に犯罪歴の確認調査が義務づけられているなど、バックグラウンドチェックの重要性が広く認識されています。
そこで今回は、外国人雇用におけるバックグラウンドチェックの重要性やメリット、注意点などについて紹介します。
バックグラウンドチェックとは?
バックグラウンドチェックとは、企業が新しい従業員を採用する際に、その人物の信頼性や安全性などを確認するプロセスのことです。具体的には、候補者の職歴や学歴、犯罪歴、破産歴、信用情報などの情報を確認します。
日本を含むアジア諸国では、採用時におけるバックグラウンドチェックの重要性の認識が遅れ、法整備も進んでいないのが現状です。しかしながら、バックグラウンドチェックは、企業が適切な人材を採用するための重要なプロセスであり、また安全性や信頼性を確保するための手段でもあります。
バックグラウンドチェックの実施により、リスクを最小限に抑え、適切な人材を見極めることが可能になります。
海外におけるバックグラウンドチェックの実状
日本では馴染みがあまりないバックグラウンドチェックですが、海外では多くの企業が導入しています。
世界的採用調査協会(NAPBS)が後援するHR.comのレポート(2018年)によると、アメリカでは95%の企業がバックグラウンドチェックを実施しています。その背景には、職場での安全性の確保、詐欺や犯罪の防止、雇用者の信頼性の確認が重要視されていることがあります。特に「ネグリジェント・ハイヤリング(Negligent Hiring)」の防止が重要な理由の一つです。
ネグリジェント・ハイヤリングとは、企業が採用過程において十分な調査を行わず、不適切な人物を雇用してしまうことです。これにより、職場でトラブルや犯罪行為が発生した場合、企業が法的責任を問われるリスクがあります。
海外ではバックグラウンドチェックは雇用プロセスの重要な一環とされており、犯罪歴の確認や資格の検証など、多岐にわたる情報をチェックすることで、企業の安全性と信頼性を確保しています。
外国人雇用時にバックグラウンドチェックが必要な理由
外国人雇用時にバックグラウンドチェックが必要な理由は、採用リスクを最小限に抑え、適切な人材や職場の安全性を確保するためです。
バックグラウンドチェックを行うことで、企業は不適切な人材の採用を避け、経歴詐称や犯罪歴などのリスクを減らすことができます。結果として、職場環境の安定や雇用の質の総合的な向上につながります。また、適切な人材を採用することで、生産性や効率性が高まり、企業の業績が向上する効果も期待されます。
このように、バックグラウンドチェックは単なる外国人の採用手続きだけでなく、企業の安全性や効率性、従業員の満足度など、さまざまな側面に影響を及ぼす重要なプロセスです。
外国人雇用時にバックグラウンドチェックをするメリット
外国人雇用時にバックグラウンドチェックをするメリットを3つ紹介します。
- 候補者情報の正確性を確認できる
- 犯罪歴を確認しコンプライアンスを強化できる
- 雇用主のリスクを軽減できる
1.候補者情報の正確性を確認できる
外国人雇用時にバックグラウンドチェックを行うメリットは、候補者が提供した情報が正しいかどうかを確認できることです。学歴や職歴などの情報に嘘がないか、正確であるかどうかを、前職の雇用主や学校に対して照会することで確認し、適切な人材を採用できます。
バックグラウンドチェックは、面接では見抜くことが難しい経歴詐称を防止するのに役立ちます。また、企業は採用プロセスの信頼性を高めることができます。
2.犯罪歴を確認しコンプライアンスを強化できる
バックグラウンドチェックを通して候補者の犯罪歴を確認することで、企業は法的なコンプライアンスを強化できます。実際に、海外ではベビーシッターや介護士など、子供やシルバー市民と接する職業の採用時において、犯罪歴の確認調査が義務づけられている国もあります。
2024年6月、子どもに接する仕事に就く人を対象に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS法」が成立し、日本でも犯歴照会の重要性が認知されつつありますが、海外の特定の職業においては、犯罪歴があることは重大なリスクと見なされます。
外国人採用時におけるバックグラウンドチェックは、法律遵守を確保し、職場や顧客の安全性を確保する手段として有効です。
3.雇用主のリスクを軽減できる
バックグラウンドチェックには、雇用主のリスクを軽減できるメリットもあります。経歴詐称や犯罪歴などを確認することで、企業は不適切な人材を採用するリスクを軽減できます。これにより、企業は法的な責任や損失を回避し、信頼性の高い従業員を確保することができます。
また、過去の犯罪歴や不適切な行動の履歴を知ることで、企業は従業員が将来的に職場内のトラブルに巻き込まれるリスクも予防できます。
外国人雇用時にバックグラウンドチェックをする際の注意点
外国人採用時にバックグラウンドチェックを行うにあたっては、注意したい点もいくつか存在します。ここでは、主な注意点を2つ紹介します。
- プライバシーが懸念される
- 時間と費用がかかる
1.プライバシーが懸念される
バックグラウンドチェックを行うことで、候補者のプライバシーが侵害される可能性があります。日本でバックグラウンドチェックを実施するにあたっては、プライバシーと個人情報保護に関する規制に従わなければなりません。
たとえば、バックグラウンドチェックを行う雇用主は、収集した個人情報の利用目的を候補者に事前に開示したり、収集した個人情報を保護し続けたりする義務があります。
また、日本では一般的に個人がプライバシーの権利を有しているため、個人情報の収集・処理をするにあたっては、候補者から事前に同意を得る必要があります。適切な法的手続きや候補者からの同意取得などを徹底することが重要です。
2.時間と費用がかかる
バックグラウンドチェックを行うには、一定の時間と費用がかかります。異なる国々の法律や文化に基づく異なるプロセスを理解し、適切に実施するためには専門知識やリソースが必要です。また、国際的なデータの収集や翻訳などにも費用と時間がかかることがあります。
採用プロセスにバックグラウンドチェックを取り入れる際には、計画的かつ十分なリソースを確保しましょう。
バックグラウンドチェックを行う方法・手順
外国人採用時のバックグラウンドチェックは、一般的に以下のような手順で行われます。
- 候補者からバックグラウンドチェックを行う同意を得る
- 候補者に必要書類を提出してもらう
- 職歴や学歴、資格などの情報を確認する
- 犯罪歴や訴訟歴、破産歴などの情報を収集する
- 収集した情報をもとに、候補者の信頼性や適性を評価する
このように、バックグラウンドチェックは時間と費用がかかる作業です。時間的・人的なリソースが限られている場合は、専門家への依頼もおすすめです。
JapanPIは、身辺調査や職場内調査・採用調査などの総合探偵業を営む会社です。採用調査・雇用調査では、採用候補者の適正審査を依頼できます。JapanPIでは、国際的なネットワークにより、国内問わず世界の約70カ国で採用調査が可能であるため、外国人採用時にも利用可能です。
まとめ
今回は、外国人雇用におけるバックグラウンドチェックの重要性やメリット、注意点を紹介しました。
バックグラウンドチェックは、企業が適切な外国人を採用するための重要なプロセスです。日本ではまだバックグラウンドチェックに関する法整備が進んでいないものの、アメリカでは95%の企業が実施しているなど、海外では採用プロセスの一環として取り入れられています。
海外でのこういった事情も踏まえ、外国人の採用におけるリスクを最小限に抑え、採用プロセスをスムーズに進めるべく、ぜひバックグラウンドチェックの導入を検討してみてください。