「3,000㎡程度の工場を30年間運営すると、維持管理や設備更新に15〜20億円(建設費の約1.5〜2倍)かかる。」
この事実をご存じでしょうか。
設備投資として10億円前後の建設費には敏感でも、その後30年間で建設費を上回る維持管理費がかかることは、意外と見落とされがちです。
さらに問題なのは、その費用の多くが「壊れてから直す」という事後対応によって発生していることです。
突然の設備故障による生産ラインの停止・納期遅延・緊急対応による高額な修理費、、、
工場にとって本当に怖いのは、設備の修理費ではなく、「工場が止まること」ではないでしょうか。
では、もし設備の故障を事前に予測し、工場を止めることなく計画的に修繕や更新ができるとしたら――。
その実現を支える仕組みが、BIM(ビム:Building Information Modeling)です。
本記事では、「BIMとは何か?」という基本から「建設費の1.5〜2倍(30年で15〜20億円)」とも言われる莫大なライフサイクルコスト(LCC)の現実・そして将来にわたって工場の安定稼働(ラインストップの回避)を維持するために、なぜ今工場にBIMが必要なのか
工場長・経営層の皆さまに向けてわかりやすく解説します。
工場の本当のコストは「建てた後」にある
建築業界には「LCC(ライフサイクルコスト)」という考え方があります。
これは、建物を建ててから解体するまでに発生する生涯コストのことです。
一般的に、建設費はLCC全体の20〜25%程度に過ぎず、残りの75〜80%は維持管理や運営費に使われるとされています。
例えば、3,000㎡(約900坪)の工場では、
・建設費:約10億円
・30年間の維持管理費:約15〜20億円
にもなると言われています。
【維持管理費の内訳(30年間)】
・光熱水費:6〜9億円
・保守点検・管理費:約6億円
・修繕・更新費:3〜5億円
つまり、工場経営において実際の大きなコストは、「建てること」ではなく「建てた後」に発生しているのです。
しかし、多くの工場では設備が故障してから対応する「事後保全」が中心となっており、突発的な修繕費や生産停止リスクを抱えながら運営しているのが現状です。
「困ったら業者を呼べばいい」が通用しなくなる
かつては、設備トラブルが発生しても、サブコン(設備工事会社)が常駐し、迅速に対応してくれる時代でした。
しかし現在は、深刻な職人不足と高採算案件の増加により、設備工事会社は案件を選ぶ時代へと変化しています。
利益の出にくい常駐営繕から撤退する動きも広がり、「今すぐ来てほしい」と頼めば駆けつけてくれる前提そのものが崩れつつあります。
施工リソースの不足は、工場運営そのもののリスクになっているのです。
「壊れてから直す」では、もう間に合わない
設備トラブルは、単なる修理費の問題ではありません。
生産ラインの停止。 納期への影響。 緊急対応による追加コスト。
その影響は、工場経営そのものに及びます。
さらに、工場を止める原因は、生産設備そのものとは限りません。
空調設備の停止、漏水、電気設備のトラブル、蒸気や給排水設備の不具合など、建物インフラ側の問題によって、生産設備の稼働に影響が及ぶケースも少なくありません。
工場を支えているのは、目に見える製造ラインだけではなく、その裏側にある電気・空調・給排水・蒸気などのインフラ設備です。
だからこそ重要なのが、「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に備える」という予防保全の考え方です。
設備の更新時期や故障リスクを事前に把握し、計画的に修繕・更新を行うことで、突発的なライン停止を防ぎ、安定した生産体制を維持することができます。
これからの工場経営には、生産設備だけでなく、それを支える建物インフラも含めて管理していく視点が求められているのです。
なぜ、工場にBIMが必要なのか
では、工場を止めないための予防保全を実現するには、何が必要なのでしょうか。
それは、「設備の状態を見える化し、将来を見据えて判断できる情報基盤」を整備することです。
その役割を担うのが、BIM(ビム:Building Information Modeling)です。
BIMは、設備の型番や設置年月、耐用年数、点検履歴、修繕履歴などの情報を一元管理することができます。
これらの情報を紐づけることで、
・いつ設置された設備なのか
・いつ更新時期を迎えるのか
・過去にどのような修繕を行ったのか
・どの設備に故障リスクがあるのか
といった情報を瞬時に把握できます。
さらに、
・更新計画の立案
・工場停止を回避するための修繕計画
・将来の改修シミュレーション
にも活用できます。
BIMは単なる「3Dモデル」ではありません。
設備情報を会社の資産として蓄積し、工場を止めないための意思決定を支える情報基盤です。 これからの工場運営では、BIMを活用して設備情報を“会社の資産”として残すことが、工場を止めないための新しい備えになっていくのではないでしょうか。
BIMはなぜ30年間で15%のLCC削減につながるのか
「BIMを導入すると、30年間で15%程度のライフサイクルコスト(LCC)削減が期待できる」と言われています。
3,000㎡程度の工場で、30年間の維持管理・運営費が15〜20億円かかるとすると、15%の削減効果は約2〜3億円にもなります。
では、なぜそのような削減が可能なのでしょうか。
理由は、大きく3つあります。
① 現場調査や手戻りの削減
改修工事や設備更新のたびに発生する現地調査や図面確認。図面と現況の不一致による手戻りは、想像以上のコストを生み出します。
BIMがあれば、設備の位置や仕様を事前に把握できるため、調査費や手戻り工事を削減できます。
② エネルギーコストの最適化
工場のLCCの中でも大きな割合を占めるのが、空調や照明などの光熱費です。
設備情報を活用することで、省エネ改修の優先順位を判断しやすくなり、投資対効果の高い対策を実施できるようになります。
③ 予防保全による設備寿命の延長
設備の耐用年数や修繕履歴を管理することで、故障する前の計画的なメンテナンスが可能になります。
突発的な故障やライン停止を防ぎながら、設備を適切なタイミングで更新できるため、結果として設備の長寿命化にもつながります。
まとめ|BIMは「工場を止めないための経営インフラ」である
BIMは単なる「3Dモデル」ではなく、設備情報を会社の資産として残し、工場を止めないための“備え”となる仕組みです。現場調査や手戻りの削減、エネルギーコストの最適化、予防保全の積み重ねは、工場の安定操業を支え、結果としてLCCの最適化にもつながります。
(株)Joh Abroadでは、工場・施設向けのBIMモデル作成を通じて、設備情報の見える化や維持管理の効率化を支援しています。
「工場のBIM化についてもっと知りたい」「費用を知りたい」「将来の設備更新に不安がある」――そのようなお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。
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